「揮発」 15句 早舩煙雨
口腔のあなたの雨に触れるとき
水銀 古き桃を切る者のいて
銀行や 笑顔の女 笑顔の女
気が触れて生まれて落ちてくるウズラ
どうせギターの穴の中だけが睦まじい
外来の青蛙放たれ 罪とは揮発性である
喉奥の空欄埋める植樹祭
バンドネオン 白い壁には脚が生え
髄膜炎 やらしい指輪 やらしい椅子
バカ向けのガム噛むバカ向けの案山子立ち
脳幹に忘れた日陰がある小鳥
透ける君に古めかしい山珊瑚がある
ボールを蹴りどこからが私なんだろう
泣く母よ 中耳に積み木積みあがっていく
今日が今日だなんて バター溶けている
(2022年7月全国俳誌協会 第4回新人賞提出作品 「揮発」早舩煙雨(落選)、『俳句展望』2023年春(第198号)に一部のみ掲載)
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